昔からヘビー級選手でありながら跳躍系の技が多かった。
ムーンサルトプレスは回転が速く、たびたび膝をマットに叩きつけていた。そのうち壊れるだろうと見ていて感じた。近年はフェバリットホールドをエグい膝打ちに代えていた。そして今回の手術。やはり膝はやられていたのだ。
武藤はデビューしたてのころから脚光を浴びていた選手だった。
UWF出戻り闘争でなぜか猪木や前田とメインにでていたし、海外遠征も同期をリードしていた。
しかし優秀とはいえまだ若手。時代は長州藤波。プロレスファンのメイントピックスを張るほどではなかった。
かくいう私もおんなじで、あんまり武藤に関心はなかった。
だが、その数年後、何故だか武藤に関心がいってしまわざるをえない事件が起こった。
当時私とプロレスの関係はテレビ以外になかった。高校生くらいだった私は火曜深夜2時まで頑張って起きていて、必死に見ていた。
ある日、高校の帰り道、私はふと立ち寄った書店で週刊誌の記事をみて愕然とした。
「長州を月面水爆葬
ムタ IWGP・18クラブ王者に」
そのころ長州はまだ鬼のように強かった。その長州が顔を塗った武藤に負けるなんて…。
で、どうしてそんな大事な試合をテレビマッチにしない。なぜだ新日本、答えろテレビ朝日!
いまでも不思議だ。このビックマッチはテレビにならなかったのである。それにあまり告知もなかった。
見ていないと思うとどうしてもみたくなる。雑誌や新聞は全部読んだ。だがビデオはどうしてもみつからない。
探しているうちに、年月は過ぎ、長州は引退し、武藤は全日本に移った。
そして今、武藤は地上波のテレビ放送のない全日本の社長となり、普通の試合すら見ることのできない存在になってしまった。
ここ半年くらい、YOU・UBEなどでしばしば昔のプロレスをみている。伝説といわれる試合から通好みの試合までだいぶみた。
しかし今もって長州対ムタの試合は見ていない。
武藤にあまり関心のない私だが、その試合を見るまでは、ずっと気になりつづけそうだ。